志摩町ロケ見学 リベンジその3
 一目だけでも生渡部さんを見られた嬉しさで、興奮気味のKさんと私。あまり待つ事もなくタクシーが来た。
 タクシーの運転手さんに渡部さんの車が去った方向を伝えると野北へ行かれたのだろうとの事。野北へ近づくと
「野北も海水浴場と漁港がありますがどちらにしましょう?」と聞かれる。
 船の出入りする漁港の方が近い様だし可能性が高そうな気がしたのでそちらに向かってもらう事にする。近づくとバスがたくさん止まっているし赤く塗られたモンゴル船らしきものが見えたので、こちらで間違いないようだ。すぐにタクシーから降りる。
 さっそく渡部さんの姿を探す。よく学校などにあるテントがいくつも横長に張られていて、エキストラの人やスタッフらしき人が大勢いるが渡部さんの姿は見えない。さっきのワゴン車の中で待機されてるようだ。窓ガラス越しに赤いマフラーが見えた時は本当に安心した。
 遠巻きにうろついていると私たちの事に気づいてしまわれたのか、またカーテンを閉められた。あまつさえ他の車に横付けして完全に私たちの視線が届かない様にされてしまわれた(泣)
 でもいつかは撮影に出かけられるだろうと待っていると御近所のおじちゃんおばちゃん達が声をかけてくれる。広島から来たというと一様に驚かれる。見物客は御近所の人達ばかりでわざわざロケを見に来たというのは私たちだけのようだ。

 そのうち停泊してあるモンゴル船の前の海岸べりにカメラをセッティングし始め、さっきのパンツスーツの女性がなにやらスタッフらしき人と打ち合わせをしている。何が始まるのだろうと思っていると渡部さんのワゴン車が近づいてきて私たちのすぐ前に停車、なんと渡部さんが出てこられた!!
 ほんの10メートルか15メートル先に本物の渡部さんがいる・・・。Kさんが持ってこられていたハンディカムで撮影しようとすると例の黒服の人に「撮影は止めて下さい」と注意される。すぐカメラを下げるが鞄の中にしまうまで許してくれなかった。
 やはりチェックが厳しい。後で知ったのだがこの黒服の人は渡部さんのガード係らしい。

 さっきのパンツスーツの女性は地元局のアナウンサーらしくインタビューがはじまったようだ。前をウロウロしていた小太りの中年男性にシーっと指を口元に当てて静粛を求められる。後で聞いたら東京のNHKの一番偉い人らしい。帰ってきて大河ドラマストーリーをみるとチーフプロデューサーのA部さんだった。

 とにかくこのインタビューの間は生渡部さんを見られるのだ。こんなチャンスは二度とないだろうと息を殺してじーっと渡部さんを見つめる。切れ切れに渡部さんの声が聞こえてくる。ああ、なんて幸せ。思い切って来て良かった。
 「地元の人達にはお世話になって」と渡部さんがこちらを手で指し示して言っておられる。思わず違うと首を横に振りそうになった。別に私に向かって言われたわけじゃないのに(^_^;)

 食い入るように見つめているKさんと私たちのそばでいつのまにか来られたのか都会的な感じの美女が小さなオペラグラスで見物しておられる。目が合うとにっこりと笑ってオペラグラスを貸して下さった。
 ありがたくお借りしてかつらの生え際などチェックする。やはり地毛みたい。ちょっと茶色っぽく感じられた。あまりきつくひっつめてなくて、ラフな感じに結い上げているようだ。肌も今の烏帽子直垂姿の時より浅黒いような気がする。野に下った後の時輔様がどのような境涯をたどるのか楽しみだ。
 なごやかにインタヴューは続きいつもの顎を少し上げて小刻みにうなづくしぐさや、笑顔も見せて下さる。
 15分くらいは続いただろうか、12時40分くらいには終了してしまう。ああ、また車へ戻られるのねと思っていると…!


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